経カテーテル的大動脈弁置換術実施施設基準
経カテーテル的心臓弁治療関連学会協議会
経カテーテル的大動脈弁置換術 実施施設基準
(2013年7月18日施行・2018年2月1日改定・2019年10月25日改定・2021年6月23日改定・2024年3月29日追記)
手術実績
- 緊急開心・胸部大動脈手術の経験があること。
- 大動脈弁置換術(大動脈基部置換術を含む)が年間20例以上あること。
- 冠動脈に関する血管内治療(PCI)が年間100例以上あること。
- 大動脈に対するステントグラフト治療(TEVARまたはEVAR)が年間10例以上あること。
- 経食道心エコー検査が年間200例以上行われていること。
設備機器
- 開心術が可能な手術室で設置型透視装置を備えていること(ハイブリッド手術室)。また必要な設備及び装置を清潔下で使用できる十分なスペースがあること。ハイブリッド手術室として以下の基準が必要である。
・ 空気清浄度 class II 以上。
・ 設置型透視装置を備える。
・ 速やかに開胸手術に移行可能である。 - 術中経食道心エコー検査が実施可能であること。
- 経皮的心肺補助装置、緊急開心・胸部大動脈手術が実施可能であること。
- 施設として、麻酔科医/体外循環技術認定士の緊急動員に配慮すること。
- 各施設においてTAVR開始に当たっては、現地調査(インスペクション)による施設認定を必須とする。
人員
- 心臓血管外科専門医(常勤*)が3名以上在籍すること。
- 循環器専門医(常勤*)が3名以上在籍すること。
- 日本心血管インターベンション治療学会専門医(常勤*)が1名以上在籍すること。
- 麻酔科医(常勤*)が1名以上在籍すること。
- 実際の手技に当たっては、循環器専門医と心臓血管外科専門医がそれぞれ1名以上参加すること。
- 上記基準のメンバーを含めたハートチームが、手術適応から手技および術前術中術後管理にわたりバランスよく機能していること。
施設
- 心臓血管外科専門医基幹施設であること。
- 日本心血管インターベンション治療学会研修施設または研修関連施設であること。
- 日本循環器学会認定専門医研修施設であること。
- JCVSDにデータを全例登録していること。
レジストリ
- NCD登録事業 (TAVI Registry) に参加し、フォローアップを含め全例登録すること。
継続条件および見直し
- この基準はTAVRの安全性を鑑みて3年後に見直す。
経カテーテル的心臓弁治療関連学会協議会
TAVRを安全に施行するためのハイブリッド手術室に関するガイドライン
経カテーテル的心臓弁治療関連学会協議会は、厚生労働省の指導の下、実施施設基準を策定したが、本邦における循環器医療の事情を考慮した上で、TAVRを安全に施行可能なハイブリッド手術室に関して以下のようなガイドラインを策定した。
(2013年11月11日施行)
- 手術室面積は60m²以上あることが推奨される。
- 設置型透視装置を備えること。(現時点ではいかなる移動式の透視装置も認めない。)
- 手術室の壁にX線不透過シールドが施されていること。
- 透視装置用の操作室を備えていること。
- 空気清浄度がclass II以上に保たれていること。なお空気清浄度class IIとは、「病院空調設備の設計・管理指針」(HEAS-02-2013) の基準による。室内循環機器にHEPAフィルタ等の高性能以上のフィルタ(JIS比色法98%以上) を取り付けることが必須で、室圧は周辺諸室に対して陽圧を維持していなければならない。緊急外科的処置の可能性も考慮し、滅菌機材を展開する部屋もclass IIの清浄度が要求される。
また、血管撮影室に設置の場合、ハイブリッド手術室に通じる周囲廊下、透視装置操作室もハイブリッド手術室と同等、class IIの清潔度が保たれていること。 - いずれのTAVRのアプローチ法においても、透視台、モニター、常設無影灯が適切に配置可能であること。
- 人工心肺装置あるいは経食道心エコー検査が可能なスペースが確保されていること。
- 開心術が可能な常設無影灯、麻酔器用ガスライン、十分な電圧を有する非常用電源が設置されていること。
- PCIや末梢動脈血管内治療を速やかに施行できる準備が整っていること。
- カテーテル室改造の場合、シンクを撤去すること。
TAVR手技の見学に関して
(2014年9月17日施行・2017年2月27日改定)
- 経カテーテル的心臓弁治療関連学会協議会は、TAVRを安全に施行するために、デバイス毎のトレーニングに加え、治療の実際や流れについて詳しく理解している必要があると判断している。よってTAVR実施施設申請にあたり、申請を行う施設は、国内のTAVI実施施設においてTAVI手技(経大腿動脈アプローチ)をハートチームにて見学していることを必須とする。経大腿動脈以外のアプローチについては、TAVI手技を実施するまでにハートチームにて見学していることが望ましい。
TAV in SAV治療実施施設基準
2018年7月より、機能不全に陥った外科生体弁に対するTAVR(TAV in SAV)が保険適応となり、TAVR関連学会協議会は、初期TAV in SAV症例の安全な導入を実現するため、2018年7月より、TAV in SAV治療実施施設基準を下記の通り制定した。この措置は保険適応開始から半年後である2019年1月に改定した。
TAV in SAV治療 実施施設基準_メドトロニック社(Medtronic)
(2018年7月1日施行・2019年1月29日改定)
- 直近の1年間において、TAVR実施施設認定の更新基準相当のTAVR症例を実施していること(年20例以上のTAVRの実施)。
- メドトロニック社TAVRシステムのデバイス指導医、または同等のデバイス経験を有しかつ指導医資格申請中の術者が所属する施設であること。
- 施設で行われたTAVR症例について、レジストリーデータ登録が100%行われていること。
TAV in SAV治療 実施施設基準_エドワーズライフサイエンス社(Edwards)
(2020年1月9日施行・2021年5月10日改定)
- 直近の1年間において、TAVR実施施設認定の更新基準相当のTAVR症例を実施していること(年20例以上のTAVRの実施)。
- エドワーズ社TAVRシステムのデバイス指導医、または同等のデバイス経験を有しかつ指導医資格申請中の術者が所属する施設であること。
- 施設で行われたTAVR症例について、レジストリーデータ登録が100%行われていること。
TAV in TAV治療実施施設基準
2022年9月27日、機能不全に陥った経カテーテル生体弁に対するValve in Valve(TAV in TAV)が薬事承認を取得した。2023年4月より、TAV in TAV治療実施施設基準を下記の通り制定した。
TAV in TAV治療実施施設基準_エドワーズライフサイエンス社(Edwards)
(2023年4月1日施行)
- TAVR指導施設、もしくは専門施設であること。
- 施設で行われたTAVR症例について、レジストリーデータ登録が100%行われていること。
- Edwards 社の TAV in TAV トレーニングを受講していること。
慢性透析患者に対するTAVR及びTAV in SAV, TAV in TAV 治療実施施設基準
2021年1月8日、慢性透析患者に対するTAVR及び機能不全に陥った外科的生体弁に対するTAV in SAV、2022年9月27日には機能不全に陥った経カテーテル生体弁に対するTAV in TAVが薬事承認を取得した。THT協議会は、透析患者に対する安全な導入を実現するため、2021年1月より、慢性透析患者に対する治療実施施設基準(エドワーズライフサイエンス社)を下記の通り制定した。また、2023年6月1日に慢性透析患者に対するTAVR治療実施施設基準を策定したが、本邦の透析患者に対するTAVR治療のより一層の発展、普及を鑑み、以下の通り追記した。
慢性透析患者に対するTAVR及びTAV in SAV, TAV in TAV 治療実施施設基準_エドワーズライフサイエンス社(Edwards)
(2021年1月18日施行・2023年6月1日改定・2023年7月1日追記・2024年4月22日改定)
- TAVR指導施設もしくはエドワーズ社製品の指導医が在籍しているTAVR専門施設であること。
- TAもしくはTAoアプローチの手技独立をしていること(*1)。
- エドワーズライフサイエンス社の透析適応拡大トレーニングを受講していること。
- 施設で行われたTAVR症例について、レジストリーデータ登録が100%行われていること。
慢性透析患者に対するTAVR及びTAV in SAV治療実施施設基準_メドトロニック社(Medtronic)
(2023年6月1日施行・2023年7月1日追記・2024年6月13日改定)
- TAVR指導施設もしくはメドトロニック社製品の指導医が在籍しているTAVR専門施設であること。
- 他社製品症例を含め、直接大動脈アプローチを2例以上施行していること(*2)。
- メドトロニック社の透析適応拡大トレーニングを受講していること。
- 施設で行われたTAVR症例について、レジストリーデータ登録が100%行われていること。
追加プロクタリングについて
施設の手技独立後であっても以下の場合は企業が追加でプロクターを派遣する必要性(状況により複数症例の派遣)を認める。
(2022年8月1日決定・2023年4月25日改定)
- 施設の安全委員会が開かれるような重篤な合併症の後の症例
- 当該施設における実施頻度・経験の少ない代替アプローチを選択する症例