サピエン3経カテーテル生体弁の経皮的肺動脈弁留置術 適正使用基準

(2021年3月1日施行)

経カテーテル生体弁留置システムである「エドワーズ サピエン3」(承認番号:22800BZX00094000)に、令和2年9月11日付で、外科的手術リスクの高い、先天性心疾患手術において植え込まれた右室流出路心外導管又は肺動脈弁位の生体弁の機能不全に対する適応が追加されたため、適正使用基準を以下に定める。なお、本適応追加は革新的医療機器条件付早期承認制度(法改正後の「医療機器条件付き早期承認制度(類型1)」に相当)による。
本基準は、経カテーテル的心臓弁治療関連学会協議会(THT協議会)が管理し、THT協議会構成学会である日本小児循環器学会が委託運営する。この目的のために、小児循環器科医、循環器内科医、心臓血管外科医からなる経カテーテル肺動脈弁留置術管理委員会(TPVI管理委員会)を設置する。

1.国内導入

サピエン3による経カテーテル肺動脈弁留置術(TPVI)の安全性を確保し、国内使用成績に応じたリスク対策を適切に実施していくために、使用状況や患者の経過を使用成績調査により慎重に確認しながら、リスク低減化対策の見直しと実施施設を段階的に拡大する。 国内導入の1段階目(Phase1)は、TPVI管理委員会の定めた基準に合致し、かつ地域を考慮して選出した8施設程度とし、公募は行わない。
本手技は、2023年4月現在、選択基準を満たした方を対象として榊原記念病院、国立循環器病研究センター、静岡県立こども病院、九州大学病院で実施できる。
国内導入の2 段階目(Phase2)は公募とし、その基準についてはPhase1終了後、THT協議会との協議の上最終決定する。

2.サピエン3の使用目的

サピエン3は、経皮的心臓弁留置に用いるバルーン拡張型外科用生体弁(ウシ心のう膜弁)システムであり、以下の患者に使用することを目的とする。ただし、慢性透析患者を除く。

3.患者選択基準

TPVIの適応については、先天性心疾患の手術を専門とする心臓血管外科医、先天性心疾患のカテーテル治療を専門とする小児循環器内科医、成人先天性心疾患のカテーテル治療を専門とする循環器内科医、サピエン3のTAVI指導医、麻酔科を含む多職種から成るハートチームで慎重に検討すること。また、症例実施に際しては、症例審査委員会(先天性心疾患のカテーテル治療を専門とする小児循環器内科医、先天性心疾患の手術を専門とする心臓血管外科医、先天性心疾患の画像診断を専門とする医師から成る第三者委員会)によるスクリーニングを必須とし、心外導管候補症例および外科用生体弁候補症例のそれぞれにおいて5例以上行うこととする。

1)心外導管あるいは外科用生体弁の機能不全の基準:
(1) 右室流出路心外導管、または肺動脈弁位に生体弁を植え込まれた患者で、中等度以上の肺動脈弁閉鎖不全を有するか、右室肺動脈平均圧較差が35mmHg以上の患者。
対象となる導管または外科用生体弁は、ホモグラフト、生体由来導管、生体弁でePTFE導管は除く。

(2) 開心術が困難と判断される基準:以下のいずれかの項目を有していること。
①循環動態的に開心術が困難・高リスク
  a.右室駆出率 45%未満
  b.左室駆出率 45%未満
  c.RVESVI 95mL/m2以上
  d.肺動脈弁以外の構造異常・機能異常の合併
  e.その他、開心術が困難と推定される循環病態
 但し、駆出率はMRIまたは心室造影(2方向同時造影)による。
② 周囲組織との癒着剥離が困難、形態的に開心術が困難・高リスク
  a.上行大動脈が胸壁に癒着
  b.右室自由壁が広範囲に胸壁に癒着
  c.正中切開による開胸が3回以上
  d.その他、開心術が困難と推定される形態病変  e.前回手術時、心前面に癒着防止シートが使用されていない
 但し、形態的評価は造影CTによる。参考:a,bは間隙3mm以下
③ 全身状態による開心術が困難・高リスク
  a.高齢(45歳以上は高リスク)文献
  b.開心術が困難・高リスクと考えられる合併症に罹患。
  c.肝機能低下
④ 導管・生体弁狭窄を合併している場合は、「狭窄部の長さ+2mm」が使用するサピエン3のステント高を超えない病変であること。

4. 手技実施およびトレーニング

サピエン3によるTPVI実施に際しては、企業トレーニング(講習及びハンズオン)の受講を必須とする。実施医としての独立には、プロクター医師の監督下で右室流出路心外導管及び外科用生体弁に対するTPVIをそれぞれ3 症例以上実施していることが求められる。

5. 使用成績調査

サピエン3の承認に際しては、行政より使用後5年間のフォローを行う使用成績調査(全例)が義務付けられている。THT協議会主導のレジストリと共同して行い、一般社団法人National Clinical Databaseのデータベース(TPVI Registry)を使用して調査データを収集する。
なお、使用成績調査に登録された初期2 年の登録症例(最低40 例、右室流出路心外導管症例:最低10 例、外科的生体弁症例:最低10 例)における手技後1 年の成績に鑑みて適正使用基準を見直すこととする。

以上


Harmony経皮的肺動脈弁システム適正使用指針

(2021年10月4日施行)

使用目的

本品は、右室流出路への外科的修復または経カテーテル的インターベンション(バルーン形成術)の既往があり、肺動脈弁置換が臨床上必要とされる重度肺動脈弁逆流症の患者に使用する。ただし、外科的手術のリスクが高く、本品による治療が最善であると判断された患者を対象とする。なお、右室肺動脈コンデュイットもしくは人工弁が留置されている患者は本品の対象とはならない。

以下の事項を参考とし、外科治療と経皮的肺動脈弁留置術のリスクを勘案してTPVIハートチームで検討する。

除外基準

※ 適応については、右室流出路再建術に関する十分な知識と経験を有し、日本小児循環器学会会員である心臓血管外科専門医を含むTPVIハートチームで検討し、外科手術が最善の選択肢ではないと判断される患者を対象とする。検討過程に関する記録を残すこと。
※ 各施設のプロクタリングフェーズ初期3症例においては、TPVIハートチームでの検討結果を、メドトロニック社が運営する第三者スクリーニング委員会(先天性心疾患のカテーテル治療を専門とする小児循環器内科医、先天性心疾患の手術を専門とする心臓血管外科医、および本品のプロクターの医師で構成)で検討し、適応について最終決定すること。尚、初期段階におけるスクリーニング状況に関しては適宜TPVI管理委員会で確認し必要に応じて認定施設に情報開示を行う。適応決定手順については症例が集積された段階で随時見直しを行う。
※ 右室流出路再建術後の形態は多様であり、本品の有効性および安全性担保のためには、解剖学的要件の適切なスクリーニングが必須である。臨床試験及び米国の市販後においても解剖学的要件のスクリーニングにメドトロニック社が提供するフィットアナリシスが全例で実施されている。本邦においても症例選択に伴う解剖学的要件の解析には、メドトロニック社の提供するフィットアナリシスレポートを参照すること。

1. Baumgartner H, De Backer J. The ESC Clinical Practice Guidelines for the Management of Adult Congenital Heart Disease 2020. Eur Heart J. 2020 Nov 14;41(43):4153-4154
2. Stout KK, Daniels CJ, Aboulhosn JA, Bozkurt B, Broberg CS, Colman JM, Crumb SR, Dearani JA, Fuller S, Gurvitz M, Khairy P, Landzberg MJ, Saidi A, Valente AM, Van Hare GF. 2018 AHA/ACC Guideline for the Management of Adults With Congenital Heart Disease: A Report of the American College of Cardiology/American Heart Association Task Force on Clinical Practice Guidelines. Circulation. 2019 Apr 2;139(14):e698-e800


Harmony経皮的肺動脈弁システム実施施設・実施医基準

(2021年10月4日施行)

(2022年4月25日施行)

1.実施施設基準

【施設要件】

1)(1)または(2)で、かつ(3)を満たす施設であること。
(1) 日本小児循環器専門医修練施設・群内修練施設
(2) 日本循環器学会専門医研修・研修関連施設
(3) 日本成人先天性心疾患学会専門医総合・連携修練施設

【手術実績要件】

1) 肺動脈へのインターベンション(経皮的肺動脈または肺動脈弁形成術)が過去3年平均 年5例以上であること(ただしCTEPHに対する治療は除く)。
2) 人工心肺を用いた先天性心疾患に対する開心術が1年間で30例以上であること。

【設備要件】

1) 2方向設置型透視装置を備えている開心手術可能な手術室(ハイブリッド手術室)または2方向シネアンジオ装置を備えたカテーテル検査室を有すること。
2)心臓血管外科医が常勤し、緊急時には経皮的心肺補助装置、緊急開心手術が実施可能であること。
3)麻酔科医による全身麻酔管理が可能であること。
4)施設として、体外循環技術認定士の緊急動員に配慮すること。
5)術中心腔内エコー検査が実施できる体制を推奨する。

【人的要件】

1)小児循環器専門医または循環器専門医(常勤)が2名以上在籍すること。
2)成人先天性心疾患学会暫定専門医*(常勤)が1名以上在籍すること。
*について、2022年4月1日以降は成人先天性心疾患学会専門医(常勤)とする。
3)心臓血管外科を専門とする医師(常勤)が2名以上在籍し、うち1名以上は右室流出路再建術に関する十分な知識と経験を有し、日本小児循環器学会会員である心臓血管外科専門医であること。
4)麻酔科医(常勤)が1名以上在籍すること。
5)上記基準のメンバーを含めたTPVIハートチームが、手術適応から手技及び術前術中術後管理にわたりバランスよく機能していること。
※ 実施施設認定後、申請の人員の異動等による変更が生じた場合は速やかにTPVI管理委員会に変更届を提出すること。
※ 欠如人員が生じた場合、欠員届および1年以内の代替人員予定・新規資格取得計画を提出し、代替人員の赴任もしくは資格取得がなされた時点で変更届を提出すること。1年以内に代替人員の赴任もしくは資格取得が確認されない場合は個別にTPVI管理委員会およびTHT協議会で協議し、要件再達成までの間、TPVI治療の停止勧告を含めた対応を行う。
※ 欠如人員が同時に2名以上生じた場合は、個別にTPVI管理委員会およびTHT協議会で協議し、TPVI治療の停止勧告を含めた対応を行う。

2.実施医基準

【術者要件】

1)小児循環器専門医、循環器専門医または心臓血管外科専門医であること。
2)主術者または第一助手として先天性心疾患のカテーテル治療を3年間で30例以上(うち16歳以上を15例以上)または年間10例以上(うち16歳以上を5例以上)の経験を有すること。*
3)主術者または第一助手として経皮的肺動脈または肺動脈弁形成術を1年間で5例以上経験していること(ただしCTEPHに対する治療は除く)。*
* 2) 3)の期間における申請施設以外での第一術者としての経験を、当該施設の病院長の公印を押したリストを提出することにより術者の経験に算入できる。
4)製造販売業者が実施する研修を受講済みであること。
5)プロクターの監督下で少なくとも3症例を実施すること。

承認製品

社名:日本メドトロニック株式会社
製品名:経カテーテルブタ心のう膜弁「Harmony 経カテーテル肺動脈弁システム」
承認番号:30300BZX00235000
承認取得日:令和3年8月23日付
 

実施施設一覧


本基準に関する問い合わせ

経カテーテル肺動脈弁留置術管理委員会
〒162-0801 東京都新宿区山吹町358-5 アカデミーセンター
国際文献社内 TPVI管理委員会事務局
TEL:03(6824)9380  FAX:03(5227)8631
MAIL:j-tpvr-office@bunken.co.jp
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